レ・ミゼラブル 感想

レ・ミゼラブル」を帝国劇場へ観に行った。2階最後列の天井席。新演出になっているのをすっかり忘れて、かつて観た「あの感動を」の気持ちで観始めた私が所々で感じたことを記録します。

 

私のレミゼ観劇歴

2000年頃の3か月ロングラン公演時に週2~3で通って、毎回泣きながら拍手してた。その後。帝劇で公演があれば期間中に2,3回は観に行っていた。当初は山口祐一郎さんや岡幸二郎さん目当てで行ってた。
何度も見て頭に焼き付いているのは
・2000年頃は1987年の初演から続くオリジナル演出
・2007年からはオリジナル演出を少し短縮したもの(短縮したことでそれまで労基法の関係で出られなかったガブローシュ役の子役が夜公演でも出られるようになった。)
で、2013年から新演出で上演されているが私の中ではオリジナルから更新されていなかった。

 

はじめての新演出版

率直に言うと、ちょっと説明しすぎじゃない!?って思った。ソロパートの余韻と想像させる余白が少なすぎるように感じた。

オリジナル演出に思い入れがある個人的な意見で、初めてレミゼを観た人には気にならないと思うし、「なんでも細かく説明する」曲が流行ったり「わかりやすさ」重視の昨今にはいい演出なのかもしれない。(わかりにくくなってる場面もあるけど)

気になったこと
・固定の舞台装置(舞台左右に3階建ての建物のセット)がある上に、各場面であれこれさらに装置が出てくるから舞台を狭く感じる。

・以前より狭くなった舞台にアンサンブルの出番が増えていて、常に舞台上にたくさんの人がいる。誰が歌ってるのかわかりずらい場面も。

・旧演出では「10年後」等の投影がされていた場面がなくなり、なぜかタイトルが投影される。コゼットとエポニーヌの成長から気が付けってことなんだろうか。

・暴力的なシーンがより暴力的に描かれている。ファンティーヌがかなりボコボコにされていた。

 ・コゼットとマリウスのシーン、2階に石投げてバルコニーに呼び出す必要ある?すぐに降りてくるし、旧演出の広い舞台で門扉の前でウロウロ行ったり来たりのモジモジ感が好きだったのに。

・学生たちが集うカフェが地下室のようになり、2幕のマリウスが回想する時は小さなロウソクがともされてる広場になっていた。「小さなイスとテーブル♪」と歌うのに何もない空間。旧演出の思い出の場所で仲間の幻影を感じてるほうが悲壮感もあってよかったと思う。

バリケードちんまりしてるような(学生が作った道路封鎖のためのバリケードだから小さくてもいいのかもしれないけど)

・アンジョルラスの見せ場が減ってる。アンサンブルに埋もれがち。

バリケードの場面が狭い中に大勢いるので、途中何度もアンジョルラスとマリウスを見失った。しかも、最期の姿が荷車。バリケードに逆さづりで盆回転して、ガブローシュと昇天の光を受けてるシーンが神々しかった。今回は「遺体回収しました」という印象が強かった。

・下水道のシーンは投影されていた映像と動きがあっていて、臨場感があった。ただ、映像がなくても想像できたし、下水道に差し込む光の照明が綺麗だったから、単調になったように感じた。

・結婚式のシーンのゲストたちのダンスがなんとなく品のない感じがして好きじゃない。

・バルジャンが召される最期の場面。映画と同様に司教様が出てくる。旧演出の司教様がいない方がバルジャンとエポニーヌとファンティーヌが「神様のおそばにいる」感じがしていたのは、私がクリスチャンではなく司教様と神様の関係がよくわかっていないからなのだろうか。

・全体として「昇天の光」の神々しさが少なくなったように感じた。

 

ザックリ箇条書きのつもりが長くなってしまった。

 

何が心に引っ掛かったのか

終演後、劇場から駅への帰り道で若い女性が「下水道のシーンよかったよねぇ。映画には勝てないけど。」と友人に話しているのが聞こえた。

感じ方はそれぞれだし、作品をどう好きなるのかも自由だし、どう語り合うのも自由だし、感想を批判するなんてことはしない。でもオリジナル版だったら、そもそもそんな感想は出なかったと思う。比べようもないほどにシンプルな舞台装置で各場面の場所や状況は観ている側の想像にゆだねられていたし、プリンシパル達のソロも照明で表現された中で歌われて、その心情が強く伝わってきていた。シンプルだったけれど、崇高な精神を感じ取れる舞台だったからだ。パリの街がごちゃごちゃしてるのなんて舞台上に再現してくれなくて良かったのに。(あくまでも私見です。)

映画版を観た時に、タイトル通りに「悲惨な人々」 としてわかりやすく表現されていて、とてもつらく重い気持ちになったことを思い出した。

 

今回の新演出版は、歌もオケも素晴らしかったし、私の心は動き、場面によっては涙も流れたし久しぶりの観劇はとても楽しめた。テンポがよくなったとも取れるけど、私には全体的には詰め込まれすぎて、場面を心に刻むゆとりなくバタバタ場面転換してる印象が強くて、場面転換があまり素敵ではないと感じた。今後、オリジナル版の上演があれば観に行きたいなぁ。

 

長く愛されるために変化することは大切なことで、それを受け入れられないほど頭も心も固くなってないと思いたいけど、「あの頃はよかった」と思ってしまう時点で確実に心も頭も老化してるんだろうなぁ。気を付けよう。